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15年06月22日 / 広瀬 隆雄 氏

ギリシャ救済プログラム延長交渉問題について

ギリシャ救済プログラム延長交渉問題について

ギリシャ救済プログラムの延長交渉が大詰めを迎えています。

アテネでは、ギリシャ政府がこれ以上、欧州連合(EU)、欧州中央銀行(ECB)、国際通貨基金(IMF)で構成されるトロイカの要求に屈し、財政切詰め策を継続するのに反対する市民が、デモ行進しています。

ところがこれと正反対に、早くトロイカとの交渉をまとめ、ギリシャのユーロ離脱を食い止めるべきだというデモ行進も行われています。

つまりギリシャでは、切詰め策の是非を巡って、世論が二つに割れているのです。


取付けパニックが起こる可能性

この混乱を見て、気の早いギリシャ市民は、交渉の結果に関するニュースを待たず、すでに銀行から預金を下ろし始めています。

その理由は、ギリシャがユーロ圏を離脱した場合、通貨ユーロが、昔のギリシャの通貨だったドラクマに戻ると予想されるからです。ギリシャ経済の実力を考えると、ドラクマは急落するリスクがあります。

だから今のうちに預金をおろし、国外に預け直すか、あるいはゴールドなどのモノに換えておくことで財産の目減りを防ごうとしているわけです。

現在把握出来ているギリシャの銀行の預金残高は4月末の時点で1,430億ユーロです。しかし先週、かなりの預金の引き出しがあったと報じられていることから、預金はそれよりも減ってしまっていると思われます。

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緊急流動性支援プログラム(ELA)

ギリシャの銀行の手持ちの現金は、20億ユーロ前後しかありません。そこでトロイカは緊急流動性支援プログラム(ELA)によりギリシャの銀行にキャッシュを貸しているのです。

これまでにELAでトロイカがギリシャに用立てたおカネは840億ユーロにのぼっています。

ただ、ELAでおカネを貸すに際して、ちゃんと担保になるものが無ければおカネは貸せないというルールがあります。

もしギリシャの銀行の預金が970億ユーロを割り込んだら、担保に供出できるものが何も残っていない状態になります。

するとELAからの支援が途絶えるため、ギリシャの銀行は預金者からのキャッシュ引出の要求に応えられなくなり、窓口を閉鎖せざるをえなくなるわけです。


交渉のテクニック

ギリシャ政府とトロイカは、お互いに最善の条件を引き出すために、駆け引きを行っています。現時点では「最悪の場合、こうなりますよ、それでも良いのですか?」と、お互いに脅し合う段階です。

これはビジネス・スクールで教えられている交渉学では、バーゲニング・レンジ、つまり譲歩できる幅を設定している段階なのです。

その場合、交渉相手に「最悪の場合は、こうなっても構わないですぞ!」というある種の脅しをすることで、相手の期待(エクスペクテーション)を固定するわけです。

これをアンカーリング(投錨)と言います。アンカーリングは、相手にズルズル引きずられて、自分の主張が完全に無視されることを防ぐ、基本戦術です。

現在は、双方がお互いに最悪シナリオを唱え合い、相手の期待を思いっきり下げる作業をしているわけですから、当然、交渉から聞こえてくるニュースは最悪シナリオを想定した、極めて絶望的なものになります。

しかしそれはギリシャにとっても、トロイカにとっても理想の「落としどころ」ではありません。

投資家は、交渉決裂によるギリシャのユーロ離脱が、ギリシャにとっても、そしてトロイカにとっても好ましくないシナリオであることを冷静に観察すべきなのです。


ギリシャを救うのは、たやすい

トロイカにとってギリシャを支援し続けることのコストは取るに足りません。

ギリシャは今年1年間で3.7兆円の借金を借り換えないといけません。3.7兆円というと大金に聞こえますが、これは日本政府が1年間に発行している国債による調達額の僅か2.1%にすぎないのです。

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話し合いの期限は6月30日です。たぶん、そのギリギリまで、両者は歩み寄りの姿勢を見せないと思います。

仮に6月30日の期限を過ぎても、IMFはそれをデフォルトという呼び方はせず、リスケジュール、つまり「返済予定の練り直し」という表現を使うはずです。

つまり現在はギリシャ政府とトロイカの、それぞれの主張には大きな隔たりがあるように見え、すべてが悲観一色なわけですが、土壇場になれば歩み寄るというのがお定まりのコースなのです。


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